2019年3月17日日曜日

『ツォンカパ中観思想の研究』目次

まず目次を挙げておきます。これは大東出版社のサイトでも挙がっているものです。


序 章
 第一節 ツォンカパにおける中観思想
 第二節 中観思想の発展段階
 第三節 ツォンカパの中観思想の展開過程
 第四節 否定対象の特定
 第五節 本書の課題と構成

第一章 中観派の不共の勝法
 はじめに
 第一節 『菩提道次第大論』の構成と「中観派の不共の勝法」の位置付け
 第二節 「中観派の不共の勝法」
 第三節 言説知・正理知・真実執着
 おわりに

第二章 聖文殊の教誡による中観思想の形成過程
 はじめに
 第一節 ツォンカパとラマ・ウマパの関係
 第二節 伝記資料に基づく聖文殊との問答
 第三節 レンダワ宛ての書簡
 第四節 『道の三種の根本要因』
 第五節 『縁起讃』における「中観派の不共の勝法」
 おわりに

第三章 初期中観思想における自立論証批判
 はじめに
 第一節 自立論証批判の位置と構造
 第二節 自立論証批判の論理
 第三節 帰謬論証派にとっての量
 おわりに

第四章 二つの二諦説
 はじめに
 第一節 前期の二諦説
 第二節 後期の二諦説
 おわりに

第五章 『入中論』の二諦説と中観派の不共の勝法
 はじめに
 第一節 『菩提道次第大論』における『入中論』の二諦説
 第二節 後期中観思想における二諦の同一性と別異性
 おわりに

第六章 自性と縁起
 はじめに
 第一節 自性の規定
 第二節 自性と縁起
 第三節 二種類の縁起
 第四節 チャンキャ『学説設定』における三種の縁起
 おわりに

第七章 自らの特質によって成立しているもの
 はじめに
 第一節 自相と自らの特質によって成立しているもの
 第二節 具格助詞kyisの意味
 第三節 唯識思想との関連
 おわりに

第八章 中期中観思想における言語論的転回
 はじめに
 第一節 『善説心髄』中観章の構成
 第二節 帰謬論証派独自の否定対象の特定
 第三節 議論の構造
 第四節 自立論証派による「自らの特質によって成立するもの」の設定方式
 第五節 「考察(vicara)」の意味
 第六節 世間一般の人の言説有の捉え方
 おわりに

第九章 二つの自性
 はじめに
 第一節 『中論』第一五章第二偈の解釈
 第二節 『中論註正理大海』における帰敬偈の解釈
 第三節 『中論註正理大海』の総論における否定対象の解釈
 おわりに

終 章 
 第一節 ツォンカパ中観思想の展開
 第二節 残された課題
文 献 表
後 記

全部で384ページです。これだけを見ていると、何が何やら分からなくなりそうですね。

主題になるのは、第一章の「中観派における不共の勝法」というツォンカパの主張です。これが初期、あるいは中期くらいまでのツォンカパの中観理解の中心にありました。簡単に言ってしまえば、これは「縁起しているものが同時に無自性である」という考え方は、ツォンカパの根本的な立場である中観帰謬論証派のみが主張できる特徴的あるいは優れた教えである、ということです。

これがどのくらいの広範で深い内容を持ったものであるかは、本書が全体として取り組んでいるテーマなので、簡単には言えませんが、逆にこれだけの量の言葉を要する思想だと言ってもいいでしょう。それは追々、わかりやすく説明していこうと思います。

さて、これがツォンカパの有名な『ラムリム・チェンモ(菩提道次第大論)』の根本主張だということに気付いて、詳しく論じたのが、1999年に刊行された『とんぱ』という一般誌のちチベット特集号における「ツォンカパにおける縁起と空の存在論─中観派の不共の勝法について─」という論文でした。その後、その理解を様々な観点から検討することに15年ほどを費やし、さらに本にまとめるために全体を書き直したり書き足したりして刊行するのに5年ほどかかっています。

もうこれだけやれば、自分の理解はこれで限界だろうと思っていましたが、実は、最近3年くらいでも、大学院生の指導をしているうちに、更に理解が深まり、訂正したり書き足したりするところが出てきてしまいました。実際には、どこかの段階で一区切りしないと次に進めませんので、これはここでまとめられてよかったと思っています。

決定版というよりは、途中経過、あるいは一里塚といったところです。ただその先を理解するためにも、ここまでのところを前提にしなければならないので、ツォンカパの中観思想に関心がある方は、是非読んでいただければと思います。

2019年3月13日水曜日

『ツォンカパ中観思想の研究』について

 しばらく放置していたこのブログを再開して、もともとのツォンカパの中観思想について研究の解説を書き溜めていきたいと思います。

 昨年3月に、それまで20年近く書き溜めてきたツォンカパの中観思想に関する論文をまとめて『ツォンカパ中観思想の研究』(大東出版社)という本にまとめました。

 実際には巨大書店以外で店頭で見かけることはないと思いますので、できれば大東出版社のページで様々なオンライン書店へのリンクがありますので、そこからでご購入いただければと思います。


 定価7,000円ですが、残念なことにAmazon.co.jpではマーケットプレイスで倍以上の値段のリストしか出てきません。まだ在庫はありますので、他の書店を探してみてください。

 このブログでは、少しずつ内容紹介をしたり、コメントをしたり、その後気づいたことなどを書き留めていきたいと思います。